チェルトの森、アフタヌーン・コンサート

先週末、二日間東京を離れていましたが、これはその顛末です。
当ブログを遡ればそれと知れることですが、毎年8月第1週の週末は、クァルテット・エクセルシオが行っている表題の「チェルトの森、アフタヌーン・コンサート」に出掛けるのが私共の年中行事。
今年も8月5日と6日の2日間に亘って当該の催しが行われましたが、いつものように我々は初日、5日の会を鑑賞して一泊。帰る途次に観光と避暑を兼ねて信州の夏を満喫してきたのでした。

先ずは二日間のコンサート・プログラムを紹介しておきましょう。

8月5日(土)

モーツァルト/歌劇「フィガロの結婚」序曲
ボロディン/弦楽四重奏曲第2番ニ長調
     ~休憩~
ヴィヴァルディ/協奏曲集「四季」より春と夏
ピアソラ/「ブエノスアイレスの四季」より秋と冬

          **********

8月6日(日)

モーツァルト/歌劇「フィガロの結婚」序曲
シューベルト/弦楽四重奏曲第13番「ロザムンデ」
     ~休憩~
ベートーヴェン/弦楽四重奏曲第9番「ラズモフスキー第3番」

私はこれを勝手にエク・蓼科音楽祭と呼んでいますが、始まったのは9年前のこと。一昨年はエクの都合で開催されませんでしたから、通算では今年が今年が8回目になる筈です。
ここで拙ブログ内を検索してみると、ささやかながらチェルトの森シリーズの歴史も垣間見えてきました。その一端を記しておくと、

確かに始まったのは2009年の事で、当初は1・2回の試みで終わる、と誰もが考えていたと思います。しかし第1回の評判が頗る良かったこともあって毎年の行事化。
3年目の2011年には同じプログラムで二日間という拡大化傾向が始まり、翌2012年からは二日間で別々のプログラム、という現在まで続いているスタイルが確立。
上記の様に2015年は休催となりましたが、2016年に目出度く復活し、今年が8回目となります。

私はこれまで全て初日、即ち土曜日に聴いてきたので、日曜日のプログラムの詳細は残していません。改めてブログの形でも何でも、記録を残しておくことの重要さに思いを致した次第。
土曜日に演奏された曲目では、ベートーヴェンのラズモフスキーの3曲は全て出ましたし、ハープも2010年に取り上げられています。
四重奏の定番たるアメリカ、死と乙女も弾かれましたし、コダーイの2番、リゲティの1番という近現代モノから、クライスラーやヴェルディと言った珍品にも事欠きません。食前酒としてはアイネ・クライネ、愛の挨拶、断章と多士済々。
もちろんハイドンやモーツァルトの古典派もキッチリ演奏されてきましたし、毎年通われているファン、別荘暮らしの紳士淑女たちも、これで弦楽四重奏曲の歴史に直接触れることが出来る。正に広範なレパートリーを誇るクァルテット・エクセルシオならではの「音楽祭」じゃないでしょうか。

いつまで続くか、それより私自身が何時まで通い続けることが出来るかは神のみぞ知るですが、これからも蓼科という高原に小さな歴史を刻んで行って欲しい、と祈念するものであります。

と、前置きが長くなりましたので、今年はザッとした感想。
例によって土曜日の朝に中央高速に乗りましたが、今年は渋滞が例年以上。途中で休憩を取ったり、茅野市入りしてから簡単な昼食を摂ったりしている内に開場時間になってしまいました。開場時間と言っても、予約したメンバーが三々五々集まるだけで時間が指定されているわけではありませんが・・・。
到着した時には、会場の「むさし庵」にはかなりの聴き手が集まっていました。

今年のMCはチェロ大友。フィガロの序曲には続編、来年3月にはアリアを含めて弦楽四重奏版のオペラを弾きますので是非、という宣伝も。
ボロディンは2013年にも登場した作品で、有名な第3楽章の美しいメロディーなど、大友・西野両氏は譜面を見ずとも空で朗々と弾いて行く風景も、間近で見ることが出来ます。

後半は二つの四季。ヴィヴァルディの演奏中には遠雷も聴こえ、そのリアリズムも頂点に達しました。
一方のピアソラは、本来はバンドネオンなどを含む5重奏曲だそうですが、今回は名アレンジャーでもある幸松肇氏による弦楽四重奏版。
ここでは秋と冬が演奏されましたが、考えてみれば、ピアソラの故郷アルゼンチンは南半球故にヴィヴァルディとは季節が逆のはず。ピアソラの冬はヴィヴァルディの夏に相当するのじゃないか、などと余計なことを考えてしまいましたが、もちろん冗談ですよ。

そんな連想が働いたのは、秋にも冬にもセカンドが駒の内側を弾く「ガリガリ」というノイズが発せられるから。何となく外から聞こえるエゾゼミのようでもあり、札幌で聞いたハルゼミのようでもある。
終わってからエクのメンバーにその話をしたら、ピアソラも四季の感覚はヴィヴァルディ同じだそうで、冬の後にはまた春がやってくるという希望が託されている由。こんな戯言を気軽に交わせるのも、チェルトの森ならではの雰囲気でしょう。

いつものように素敵なアンコールも用意されていて、今年はピアソラと同じ幸松版の「八木節」。オリジナルに掛け声も加えた「改訂版?」に、45名の客席から大喝采。後半とアンコールは、チェロを除く女性3人が立って弾く、というのは新趣向でしょうか。
演奏会の後は、これも恒例のワイン・タイム。エクの演奏会には必ず来られる常連諸氏、1年振りの再会に話題が尽きない方々、初めての人達との新鮮な出会い、等々。また来年もお会いしましょう。

我々の今回の泊りは近接しているチェルトの森ロッジ。コンサートの行き帰りに鹿に出くわしたりするのは、東京では有り得ません。
翌日は家内の要望もあり、山梨県の大泉にある吐竜の滝(どりゅうのたき)で涼を取りつつの撮影会。(成果は家内のブログをご覧ください)
原村の朝市、帰路に点在する絶景スポット、かつては賑わった清里の現在などを通り抜けながら猛暑の東京へ。今年も盛り沢山なチェルトの森でした。

 

 

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